「すわる」ということ― その 骨盤形状の違い
別名「骨盤物語」です。コメントいただきましたが、シリーズごとに分類できれば、僕も助かります。たしか、7月2日からのつづきです。

座るための骨格構造ではなく「人体は長い年月を掛けて二足歩行に最適な構造を獲得した」という話でした。順番はともかくとして、ヒトは立位歩行を獲得し、上肢を自由に使えるようになるわけですが、ご覧の通り四足動物とは骨格構造が明らかに異なります。

これら図も前回紹介した「美しく立つ −スポーツ医学が教える3つのA」渡會公治著 の中に出ています。







縦長の骨盤が、横に広がったわけですが、サル(ここではチンパンジー)の骨盤はイヌに近いと言うことがよくわかります。

さて、下の図はなんと猿回しの初代ジロー(ニホンザル)の骨格だそうです。



出典;構造医学 吉田勧持著

ジローは10年以上に及ぶ二足歩行の調教生活によって、腰椎部に前弯を形成したということです。 (つづく)
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「すわる」ということ― その 脊椎の彎曲の進化(?)
久しぶりにこのシリ−ズに戻ります。先回は6月20日でナメクジウオの話しでしたね。

5月29日に「その 二足歩行」で示したのは、イヌ・サル・ヒトの骨格の図でしたが、本日は下の図を、とくとご覧ください。



この図は、この図は「美しく立つ −スポーツ医学が教える3つのA」の中に出ています。



渡會公治(東京大学大学院准教授・整形外科医・スポーツドクター) 著 文光堂

ちなみに、この3つのAとはこの本では、Anatomy(アナトミー:構造と機能),Alignment(アライメント:姿勢肢位の違い),Awareness(アウェアネス:身体を認識する)ということです。

以下は、その図の説明です。

図5−2 脊椎の彎曲の進化
脊椎の彎曲は長い進化の中でできあがっていった。魚類ではまっすぐな脊椎は、爬虫類では背側に凸となり4足歩行が可能となり、頚椎前彎ができ、後頭骨の発達、大後頭孔の相対的な移動となって頭が脊椎の腹側に向くヒトの特色ができあがった。(三木成夫、文献17より


そして、この三木成夫(みき しげお、1925年12月24日 - 1987年8月13日)とは東京芸術大学の先生でもあった有名な解剖学者・発生学者です。

僕がいい加減な説明をするより、こういう資料を示したほうが、きちんと理解していただけますよね。

このシリーズで前置きとして、「人体は長い年月を掛けて二足歩行に最適な構造を獲得した」ということを、まず結論付けておきたかったのです。

この本では、進化とありますが、僕は「変化した」というくらいがいいかなと思っています。

長々とここまで皆様を引っ張ってきましたが、「つまり、人体は座るために最適化した構造を持っていない」ということを、ただ単に述べておきたかっただけなのです。

これからが、本論です。しかし、たぶん竜頭蛇尾となるでしょうが、まだまだこのシリーズは続きます。(つづく)
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「すわる」ということ― その ナメクジウオ
「骨盤物語」ではなかった、「すわる」シリーズは、製作者の都合により、予告なく勝手にお休みしておりました。本日から再開しますが、休み休みになるでしょう。と言うよりは、「ネタがたまったら掲載しますね」ということです。

つい最近のニュースですから、ご存知の方も多いと思いますが、そろそろホヤが旨くなる頃かなと思っていたやさきに、いきなり「人類の祖先はホヤではなかった」というのには、正直たまげてしまいました。

以下、毎日新聞からです。

脊椎動物:祖先はナメクジウオ ヒトと遺伝子6割共通

ヒトなど脊椎(せきつい)動物の祖先はホヤ類ではなく、ナメクジウオ類であることが、ナメクジウオの全遺伝情報(ゲノム)解読で分かった。京都大、国立遺伝学研究所や英米などの国際研究チームが突き止めた。19日付の英科学誌「ネイチャー」に掲載された。

ナメクジウオは脊椎動物の前段階で背骨に似た筋肉組織を持つ「脊索(せきさく)動物」の一種。大きさは3〜5センチ。頭部はないが尾びれに似た器官があり、魚のように泳ぐ。ホヤも同じ仲間で、今から5億2000万年以上前に、ホヤ、ナメクジウオ、脊椎動物の順に進化したと考えられてきた。



研究チームの解析の結果、ナメクジウオのゲノムの大きさはヒトの約6分の1で、約2万1600個の遺伝子を特定した。このうち、1090個の遺伝子をホヤと比較し、ナメクジウオの方が早く現れ、原始的であることを確認した。また、遺伝子の6割がヒトと共通しており、並び順も似ていた。一方、ホヤは独自の進化を遂げた傍流と分かった。



佐藤矩行・京都大教授(発生ゲノム科学)は「ナメクジウオが脊椎動物の祖先に最も近い。ナメクジウオから脊椎動物が直接的に進化したと考えられる」と話す。【下桐実雅子】


なるほどですが、さて、このナメクジウオとは?

フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』によると、

全世界の暖かい浅海に生息している。尾ひれを持ち良く泳ぐことができるが、通常は海底の砂のなかに潜って生活している。ホヤなどと同様、水中の食物をろ過することで摂食している。雌雄異体であり、精子と卵を体外に放出し、体外受精を行う。

なかなか立派じゃないですか?

すると、「ホヤというやつは、そんなに偉いのかよ」という新たな疑問が立ち上がってきます。ホヤをなめたらあかんぜよ!

日本近海にはナメクジウオ Branchiostoma belcheri、カタナメクジウオ Epigonichthys maldivense、オナガナメクジウオ Epigonichthys lucayanum の3種が生息している。愛知県蒲郡市三河大島と広島県三原市有竜島がナメクジウオの生息地として天然記念物に指定されている。

「かつては食用とされた」とありますから、今は獲れなくなったということでしょう?ナメクジウオは、なめたり食べたりしては、いけないようです。

この話は、明日以降に続きます。いつ「すわる」が出てくるのかは、お楽しみに!
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「すわる」ということ― その アンカーサポート
骨盤を起こすように支えると前に滑り出す力が働きます。例えば、一本の棒を壁に立てかけたとしたら、壁は一定の力で押し返し、地面では壁から離れようとする力(応力)が発生しています。

骨盤で起こっていることを模式図で表してみました。壁に当たるところが腕で支えているところです。ご覧のように、坐骨が前に滑り出す力い発生することがわかります。



この滑りを構造的に防止しようという考え方で、アンカーサポートが生まれました。これを単に摩擦だけで止めようとすると、人体の皮膚と坐骨の間にずれを発生させ、皮膚組織にストレスを与えることになり、ジョクソウの原因にもなりますので、構造的にそれを防がなければなりません。それがアンカーサポートでした。

ベンクトさんの本を翻訳するときに困った単語のひとつでした。結果、英語の表記をそのままにし、「アンカー(錨)サポート」としました。今ではニッポン国内では、「アンカーサポート」で通るようになっています。



パンテーラ社の車椅子とカルムの座面シート部をご覧ください。これで坐骨の滑り出しが構造的に制限できます。



こんな簡単な工夫で、この問題が解決しました。 (つづく)
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「すわる」ということ― その 骨盤を支える
腰掛けに掛けて上半身の力を抜くと、坐骨を支点にして骨盤は後ろに少し倒れる理由は、下の図でわかるように、上半身の重心線が坐骨より少し後ろにあるからだと言われています。



別説ですが、頭部が前方に倒れる構造になっているからとも言われています。

確かに居眠りすると頭部は前傾します。それと同時に、胸郭も下方に潰れていきます。そうなると坐骨を支点とした場合、ますます前方に重心が移行します。よって骨盤は後傾することになります。

いずれの説によっても、骨盤は後方に傾いてしまうことになります。そして、重力下でバランスを保つために、脊柱はCカーブに変化します。



ここで、骨盤の傾きを防ぐと、どうなるのでしょうか?

腕の力で骨盤の後傾を防いでもらいました。被験者は頚髄損傷者です。最初こそ前方へ倒れることに対して、左手をあてがっていましたが、バランスをとる場所が見つかると、その手も自由になりました。



ここで、僕らは骨盤サポートの意味を、自分の腕にかかった重さと、坐骨の前方への滑り出しは受けた胸で、まさしく実感できます。どうか、セラピストの皆さん!どうぞお試しください。(つづく)
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「すわる」ということ― その 仙腸関節と仙腰関節
お待たせしました。骨盤物語の再開です。

骨盤は、バランスの取れた立位をとる基礎になります。言い換えれば、骨盤の傾きが脊柱のカーブを決定します。

このことを、明確に教えてくれたのが、スウェーデンの理学療法士のベンクト・エングストロームさんです。1994年に僕らが翻訳した本「からだにやさしい車椅子のすすめ(三輪書店)」でした。



遊園地で、疑似体験はありますが、僕はまだ本格的(?)無重力の体験がありません。しかし、重力がない世界だと骨盤が傾いても、脊柱は変化しないはずです。

重力があるがために、その中で、バランスをとるために脊柱のカーブは変わるのです。

骨盤の傾きが脊柱のカーブを決めるのです。仙骨は仙腸関節によって腸骨とつながってわずかな動きはあるものの、一体化しています。後傾した骨盤とは、脊柱の土台になる仙骨が傾くことに他なりません。



それでは、いよいよ座位の話になりますが、台の上に腰をおろし、背筋をしっかり伸ばすと、坐骨が支持点になります。ここで上半身の力を抜くと、坐骨を始点にして骨盤は後ろに少し倒れます。


骨盤が倒れると、立位のときと同様に脊柱のカーブが変わります。これまでのダブルS字カーブ(頚椎前弯、胸椎後弯、腰椎前弯、仙骨・尾骨部後弯)からCカーブに変わります。バランスをとるためですね。(つづく)
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「すわる」ということ― その 二足歩行
犬と猿、そして人です。たぶん雉(キジ)は上空に舞い、鬼が島の方向を確認しているところだろうと思います。



こうやって丸裸にされ、しかも骨まで見通されてしまった図を見せられてしまうと、犬や猿は鬼退治なんか馬鹿らしくなるかもしれませんね。

骨のつくりだけ見てみると、そう差はないようだし・・・。何でキビ団子くらいに釣られてここまでやってきたのかと、キジ以外は後悔するかもしれませんね。

しかし歴然とした差は、二足歩行という移動様式にあります。

実は、このシリーズの「その 立位とは」で、最初にご紹介したかったのが、この図でした。やっと仕舞っておいた場所が見つかりました。捜して見つかるものではなく、他のモノを捜していていたら出てきたのです。

用意周到とは全く逆で、泥縄と言うよりは、衝動的思いつきの「出たとこ勝負!」でブログ作成を楽しんでいるのが、バレます(とうに、バレてますか)が、それも人生の妙なる喜びとご勘弁ください。

ご覧の通り、サルはヒトに極めて近いと言われていますが、骨格構造を見ると、イヌに近いように見えます。

サルは時々、上手に立ちますが、脅かすと必ず四つ這いで逃げます。急に立ちあがって逃げたら、それはサルではなくヒトです。間違いない!

もちろん、驚いて腰を抜かし四つ這いで逃げるヒトはおります。しかし、驚いて立ち上がって逃げるサルはいないということです。(そこのところ、ヨ・ロ・シ・ク!)

ここで、注目していただきたいのは、それぞれの背骨の形状と骨盤、そして肩甲骨です。

イヌの脊柱はアーチ型ですが、その先に頭が付いており、目鼻は脊柱の方向に沿って付いています。イヌは四つ這いに適応した骨格構造を持っています。

ヒトの目鼻は、脊柱の方向からおよそ90度ずれています。二足歩行には、こうでないと困りますね。雨水は鼻の中に直撃です。

サーカスのイヌは立って移動もできますが、彼らは前方を見るのに大変苦労しています。四つ這いの状態だったら一生懸命に下を見ているわけです。

逆にわれわれ人類も四つ這いはできますが、進行方向の安全を宅人するためには、首はしっかり上を向くようにしておかないといけません。

実は、この90度の差こそが、四足動物との差なのです。(つづく)
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「すわる」ということ― その 寛骨臼と大腿骨頭(後編)
大腿骨頭はボールのような形の骨が臼蓋と呼ばれるソケットのような部分に納まって骨盤を支え、骨盤の位置を一定に保ちます。ですから立位において寛骨臼と大腿骨頭が収まる場所は、ほぼ一定しています。



重力方向に対し、その場所が補強されていることを確認することは容易です。重症心身障害児施設に勤務していたころは、仕事柄X線写真を見せてもらうことがありましたが、歩くことのできる人は、その部分は白く写っていました。骨密度が高くなっていることが、素人の僕にもすぐわかりました。



90度ほどずれた場所にも、少しその形跡が見られます。ハイハイしていたときに形成されたものです。

僕がつくった膝受けタイプのその椅子に座ると、股関節部はどうなっていたのか、もう想像がつきますね。

その姿勢を維持するのが嫌になる原因が浮かび上がってきます。股関節は普段経験することのない角度で大腿骨の骨頭が臼蓋を押し付けるからだと考えられます。

バランスチェアでも同じことが起こります。機会あったらご自身のからだで感じてみてください。30分くらいで感じるはずです。(つづく)
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「すわる」ということ― その 寛骨臼と大腿骨頭(前編)
タイトルは「すわる」ということですが、今しばらくは立位について考察してみますので、ご辛抱ください。

動物の骨格構造は、移動様式によって最適化を図った結果、あるいはその進化の過程として捉えることができるからです。移動するための機構の洗練を他よりも優先させます。

例えば、鳥の骨が中空になっていることや排泄物をためる機構を持っていないことなどは、全て空を身軽に飛ぶことを優先させた結果でしょう。

人体構造を語るには、二足歩行という移動様式から始めないといけないわけだし、その基本原理は、「なぜ立位か?」という点を明らかにしておく必要があるのです。

と、僕がエラソに、力んでみてもタカが知れております。これまでのささやかな経験時になった文献、そして解剖学のテキストを引っ張り出しながら、少し整理していきます。

そういうわけですから、この連載シリーズは、途中で休み休み、しかしどこかまでは進めていくつもりですので、気長にお付き合いください。

さて、寛骨臼の話でしたね。

股関節は寛骨臼が大腿骨の骨頭部を納めて、あたかもボールジョイントのような構造になっている。しかし、機械のボールジョイントと異なり、360度どの方向にも自由に動くわけではない。

最も楽な姿勢で立ったときに、そのボールジョイントには、どういう力がかかっているのだろうか?

大腿骨頭の受ける側の寛骨臼には一定の場所に負荷がかかっています。この場所は、寛骨臼の中で一番丈夫になっているところです。次に丈夫になっているところは、立位のときの骨頭の位置が90度ほどずれた場所です。四つ這いする時に、骨頭が納まるところです。

以前、アテトーゼタイプの脳性麻痺の児童や大人になった方たちに、膝受けの付いた椅子を個別に数台作ったことがありました。ちょっとした物音に対しても全身が伸展緊張してしまう人たちです。

緊張の起こり方を観察しました。例えば、首が後ろに反り返ると同時に全身が棒に様になってしまう人に合う椅子は、なかなかうまく作ることはできませんでした。セラピストと一緒に試行錯誤でした。

首の動きを止めることはできませんでしたが、膝が突き出してくる動きは、どうにか止めることができる人がいました。その人のために、調節式の膝受けを考案し製作しました。

椅子の座面は普通奥が低くなっていますが、逆に前を低くし、座面が前傾するようにしました。そのままだと滑り落ちてしまうので、膝関節を屈曲させ、膝を受ける形のクッションを作ったのです。

確かに最初はうまくいくのですが、30分もすると姿勢は崩れっぱなしです。それで再度、座り直させますが、やはり30分が限度です。

他の子でも、座らせた直後はとてもよい姿勢です。しばらくはいいのですが、30分も持たずダメでした。しかし、そのときは劇的にうまく座れることをもって、失敗と言う結論には達しませんでした。

つまり30分程度うまく座れたので、食事場面で使われることはありましたが、次第に使われなくなりました。やはり、結局どの椅子も失敗でした。

それで、僕が自分で座れるものを製作して試してみました。何と同様の結果です。最初は背骨が伸びて、とても気持ちいいのですが、30分程度は何とか我慢できます。しかし、だんだんその姿勢を維持するのが辛くなると言うか嫌になります。

ノルウェーで発明(?)されたバランスチェアも試しましが、同じ結果でした。

さて、僕のからだの中で、何が起こったのでしょうか? (つづく)
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すわる」ということ― その 寛骨臼
ヒントは、この寛骨臼です。
この図を、よくご覧ください。



僕も改めて、じっくり見てみます。

もちろん、レントゲン写真が見れたり、骨模型が手近にある方は、じっくり観察してコメントお願いします。
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